2023年10月25日水曜日

炭鉱電車「鉄道の日」

2020(R2)年5月7日は三池鉄道の最終運行日でした。この日をもって、明治大正昭和平成令和”128年”の歴史を閉じています。終わりがあるなら始まりもということで、三池鉄道の開通日を文献から調べてみましょう。

炭鉱電車「鉄道の日」の巻。


まずは『三池港務所沿革史』(*1)より
浜(横須浜)~宮浦(島ノ上)間 1891(M24)年11月3日
宮浦   ~七浦(平原)間  1891(M24)年12月25日

宮浦は宮浦坑、七浦は七浦坑のいずれも出炭駅、浜は積出港です。路線認可としては横須浜~平原間ですが、11月3日に宮浦間を先行して運輸開始しています。

もうひとつ『三井鉱山五十年誌稿本』(*2)から、本文を引用。
(1891(M24)年11月)「3日、天長節に試運転をなしたるに稍々都合宜敷候間、4日より宮浦横須間丈の運搬を初め」とあり、11月3日は試運転日として翌4日を運輸開始日としています。天長節とは天皇誕生日のこと、明治天皇は1852(嘉永5)年11月3日降誕の由。ちなみに、同日は明治節をへて、戦後は文化の日として今も引き継がれています。

上記2誌はいずれも戦前に記されたものですが、戦後の文献ではどうでしょう。いくつか代表的なものをピックアップしてみます。

三井鉱山時代(『三池時報 1962(S37)年6月号』より(*3))
七浦~横須浜間鉄道開通 1891(M24)年12月 (日にち記載なし)

三井三池港務所時代(『三池時報 1971(S46)年7月号』より(*4))
平原から横須浜までの1哩70鎖に専用鉄道敷設 1891(M24)年11月(日にち記載なし)

三井鉱山100年史抄本『男たちの世紀』1990(H2)年5月発行
三池横須浜~七浦坑間に運炭鉄道開通(三池専用鉄道の発足) 1891(M24)年12月25日

三井石炭鉱業時代 鉄道課冊子1992(H4)4月編集
七浦より横須浜まで専用鉄道が敷設され蒸気機関車により石炭が輸送された 1891(M24)年11月(日にち記載なし)

そういえば三井化学時代は、この手の記事や冊子は見なくなりました。ちなみにウィキペディア(「三池鉄道」)は参考文献を示していないものの、「1891(M24)年12月25日三井鉱山合名部の専用鉄道として開業」としています(この記述には別に疑問あります・・・)。

結局のところ、11月3日(ないし4日) or 12月25日とするかは、最初の開通区間を横須浜~宮浦とするか、七浦とするかの違いなので、どちらが正当という話ではありません。個人的な意見としては・・・11月3日を「鉄道の日」として推します。
すでに11月3日(文化の日)は、大牟田荒尾では近代化遺産一斉公開日として三池港万田坑宮原坑等のフェスタ(*5)として定着しました。鉄道ファンとしては、大牟田市が保管していた炭鉱電車4両の、年に一日だけの公開日が2007(H19)年から始まったのが記憶にあるところ。いささかイベントに便乗ではありますが、11月3日を炭鉱電車「鉄道の日」(*6)として加えてみては如何でしょう。


(*1)三池港務所五十年沿革史編纂室1942(S17)年
(*2)三井鉱山五十年史編纂室1943(S18)年
(*3)三池港務所運輸課「15000屯出炭に対応する鉄道輸送とその施設」
(*4)港務所技術部鉄道課鉄道係長吉田次雄「三池鉄道の沿革」
(*5)大牟田荒尾の近代化遺産一斉公開としては2008(H20)年11月3日が最初、以来毎年、恒例イベントとして定着した。なお2007(H19)年は近代化遺産特別公開として催された。炭鉱電車公開もその一環。
(*6)本家「鉄道の日」は新橋~横浜間の鉄道開業を記念した10月14日。1994(H6)年に制定。

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