2024年7月7日日曜日

デ1号電源車⑧

デ1号電源車の制動(ブレーキ)について。
まずハコ1号から引き継いだ側ブレーキ装置から。種車ハコ形は側ブレーキのみで、片輪のみに、内側から片押しで掛かる仕様でした。制動力としては貧弱ですが、三池では標準仕様。
写真は”側ブレーキてこ止め装置”と呼ばれるもの。上がブレーキをかけていない状態(緩解)、下がブレーキをかけた状態(緊締)となります。テコの先端と、ラックハンドルが黄色く塗られているのはデ形のみの特徴。ハコ1号の製造年(1942(S17)年)からすると、元々はピンによってテコを固定する”ピン止め形”という方式(*1)のはずで、現在のラック形(ブレーキイージー13形)となったのは、デ形改造以降だと思われます。



デ形の製造時は側ブレーキのみでしたが、1965(S40)年6月竣工で空気ブレーキが取り付けられました。製造後1年ほどは各種試験的な運転となっていたので、その間に現場からブレーキの効きが悪いといった声が上がったのかも。デ1号の写真はうまく撮れていなかったので、1枚目は同型のデ4号から、2枚目は更新車のデ3号から。デ3号には床下機器がないので、配管を含めた機構がよく見えます。



ブレーキシリンダー(制動筒)のみとなっているので”直通空気ブレーキ”ですね。構造的には機関車のブレーキの一部となり、シリンダーを動かすエアーは機関車から直接供給されます。一般的な貨車は、”自動空気ブレーキ”として補助空気溜と三動弁が加わり、万が一の車輌分離の際に、その名の通り”自動”制動が掛かります。直通空気ブレーキは機関車と分離してもブレーキは作用しないリスクがありますが、構造がシンプルなのと、機関車からの反応がよいというメリットがあります。検査時以外は20トン電車と連結を解くことはないため、デ形ならではの特徴といえます。


デ形の台車は既に取り上げ済みですが、4輪すべてに両抱え式で制輪子が掛かります。三池貨車としては例外的な制動強化となっています。おそらく空気ブレーキ取り付けと同時改造と思われます。

デ1号電源車⑤
https://ushiyan-tantetsu.blogspot.com/2024/06/1.html

余談ですが、展示線にて逸走が起きた非常時の対策として、北(宮浦)側レイルにはカーキャッチャー(制動靴)がセットされていました。逸走時にはカーキャッチャーが車輪を受け止めて、レイルとの摩擦によって制動をかける機器になります。



(*1)ハト形無蓋車等に見られます。

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