2024年7月21日日曜日

デ1号電源車⑨

本題の前に。
炭鉱電車ステーションゼロの特設サイトが更新され、7月8月の公開日が発表されました。
公開日は今までと同様の第3土日曜ですが、夏休みスペシャルと称して入場料、乗車体験料がお得な設定となっています。チラシ(PDF12.5MB)は凝ったものでセンスよいですね。社内にデザイン好きな方がいるのでしょうか。


万田坑のデ1号観察を続けます。
ようやく~、デ1号の心臓部といえる蓄電池を見てみます。運転終了後の整備点検を見ることができました。


”蓄電池”をもっと間近で見たいという需要があるとは思えませんが、アップにした写真も挙げておきます(写真はデ3号のもの)。セルは5列5行で隙間なく並んでいます。真ん中ひとつはスペーサーなので全部で24セル。1セル2Vを直列で繋いで48V。10箱並べて480Vを確保しています。端子の間に見えるのはフロート液口栓で、精製水の液量チェック、兼注ぎ口となります。


電池箱の内側にラベルが貼ってありましたので、型式を覗き見ます。GSユアサ製の電気車用蓄電池”VGDS480-1形”とありました。同社HPで調べると、Vシリーズと呼ばれる電動車やフォークリフト向けの鉛蓄電池です。製品一覧に該当型式はないので、おそらくオーダー品だと思われます。型式にある”S”は何らかのオプション、”480”は蓄電池容量(5時間率容量480Ah)でしょう。


せっかくなのでオープン状態の蓄電池箱をみてみましょう。天蓋は平面ではなく、外側に向けてわずかに傾斜しています。天板裏に張られたは白いマットは遮熱材でしょうか。また通風孔が外側以外の三面にありますが、これは充電時に発生する水素ガスを逃がすためと思われます。




2024年7月7日日曜日

デ1号電源車⑧

デ1号電源車の制動(ブレーキ)について。
まずハコ1号から引き継いだ側ブレーキ装置から。種車ハコ形は側ブレーキのみで、片輪のみに、内側から片押しで掛かる仕様でした。制動力としては貧弱ですが、三池では標準仕様。
写真は”側ブレーキてこ止め装置”と呼ばれるもの。上がブレーキをかけていない状態(緩解)、下がブレーキをかけた状態(緊締)となります。テコの先端と、ラックハンドルが黄色く塗られているのはデ形のみの特徴。ハコ1号の製造年(1942(S17)年)からすると、元々はピンによってテコを固定する”ピン止め形”という方式(*1)のはずで、現在のラック形(ブレーキイージー13形)となったのは、デ形改造以降だと思われます。



デ形の製造時は側ブレーキのみでしたが、1965(S40)年6月竣工で空気ブレーキが取り付けられました。製造後1年ほどは各種試験的な運転となっていたので、その間に現場からブレーキの効きが悪いといった声が上がったのかも。デ1号の写真はうまく撮れていなかったので、1枚目は同型のデ4号から、2枚目は更新車のデ3号から。デ3号には床下機器がないので、配管を含めた機構がよく見えます。



ブレーキシリンダー(制動筒)のみとなっているので”直通空気ブレーキ”ですね。構造的には機関車のブレーキの一部となり、シリンダーを動かすエアーは機関車から直接供給されます。一般的な貨車は、”自動空気ブレーキ”として補助空気溜と三動弁が加わり、万が一の車輌分離の際に、その名の通り”自動”制動が掛かります。直通空気ブレーキは機関車と分離してもブレーキは作用しないリスクがありますが、構造がシンプルなのと、機関車からの反応がよいというメリットがあります。検査時以外は20トン電車と連結を解くことはないため、デ形ならではの特徴といえます。


デ形の台車は既に取り上げ済みですが、4輪すべてに両抱え式で制輪子が掛かります。三池貨車としては例外的な制動強化となっています。おそらく空気ブレーキ取り付けと同時改造と思われます。

デ1号電源車⑤
https://ushiyan-tantetsu.blogspot.com/2024/06/1.html

余談ですが、展示線にて逸走が起きた非常時の対策として、北(宮浦)側レイルにはカーキャッチャー(制動靴)がセットされていました。逸走時にはカーキャッチャーが車輪を受け止めて、レイルとの摩擦によって制動をかける機器になります。



(*1)ハト形無蓋車等に見られます。